4つの軸講座 第3章

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彼女(相葉遥)は少し疲れているようだった。僕(橋本)は彼女が好きな紅茶を頼み、一息ついてもらっていた。

Tea Time with Mooncake Pt. II

「相葉さんは紅茶が好きなんですね」

「あっ、そうなんです。橋本さんがコーヒーを頼んでいたので、それに合わせてしまいましたが、実は紅茶が好きなんです」

彼女は少し微笑みながら、話し始めた。

「他に好きなモノはないんですか? 飲み物でも食べ物でも……」

「あっ、白ワインと……肉じゃが、です。あれさえあれば、本当に幸せです」

「白ワインと肉じゃが、スゴい組み合わせですね」

彼女は笑っていた。表情も明るくなったところで、僕は次の話を始めた。

「では、第3の軸の話をしますね。第1の軸、第2の軸は全てお客さまへの調査をすると、頻繁に見られるものですが、この第3の軸『(タイ)』は違います。『成約率』を測定することで明らかになるものです」

「成約率……」

「成約率というのはどのくらいの確率で成約(申し込み)するのかということです。たとえば、ホームページの成約率の場合は、ホームページに訪問した見込客のうち、どのくらいの確率で成約するのか、ということになります。この成約率はコンバージョン率、コンバージョンレートなどと呼ばれることもありますが、好きな呼び方で構わないです。そして、第3の軸『(タイ)』とは『対面』の『対(タイ)』です」

「人と対面するという意味の、『対面』ですか?」

「そのとおり。『対面』というのは実際(リアル)にお客さまと会って売ることを言い、お客さまと実際に会わずに売ることを『非対面』と言います。『対面』の代表的な例が『営業』です。お客さまと直接会ってモノを売るわけです。逆に『非対面』の代表的な例が『通販』。ダイレクトメールなどもそうだし、ネットでの通販ももちろんそうです。お客さまと直接会わないでモノを売ることを指します」

ここから僕は彼女にある事例について話し始めた。

「以前、某大手企業でこの『対面』と『非対面』の成約率を測定したことがあります。その詳細な結果については秘密保持の関係から公開できませんが、圧倒的に『対面』の方が成約率は高い。圧倒的に、です。『対面』にも『非対面』にもそれぞれの強みがありますが、成約率という点では圧倒的に『対面』が有利なんです。これはその後、他の大手企業などで分析しても、同じ結果でした」

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そして、僕は一呼吸して、もう一度言った。
「つまり、相葉さんのお客さま(見込客)が1人しかいなくて、その1人にモノを売るなら、圧倒的に『対面』の方が有利なんです」

僕がそれを話すと、彼女は不思議そうな表情をして、すぐに質問してきた。

「ではなぜ、ネット(非対面)で販売する人が多いのですか?」

「それはシンプルです。ネットの場合、広く訴求することができるからです。一人ひとりのお客さまごとに見ていくと、『対面』は成約率が高いのですが、ただ欠点もあります。たとえば、1日に1000人に営業することはできません」

「1日に1000人。それは無理に決まっています。移動の時間はあるし、時間は限られているし、1日でそんなに多くの人に会えないですから」

「そうなんです。でも『非対面』だと十分に可能ですよね。たとえば、ネットであれば、1日どころか、1時間に1000人にアプローチすることも十分に可能です。たとえば、僕のTwitterであれば、ツイートによっては1回のツイートが2万人に見られることもあります」

僕はそう話しながら、あるツイートのツイートアクティビティを見てもらった。そして、言った。

「このように、わずか1分ほどで書いたものが、2万人に届くわけです。つまり、狭くて高い(狭い<範囲の>顧客に対して、成約率が高い)のが『対面』で、広くて低い(広い<範囲の>顧客に対して、成約率が低い)のが『非対面』なんです。この場合、相葉さんはどちらを選びますか?」

「それは効率的ですから、『非対面』の方がいい気がします」

彼女は自信をもって答えた。

「確かに効率的に感じますよね。特にネットでの展開なら、自分たちが動かなくていいし、ラクな感じがする。実際に相葉さんもネットに取り組んできたんですよね。その結果はどうでしたか?」

彼女は「橋本さんはわかってるクセに……」と心の中で思いながら、ボソッと話した。

「うまくいきませんでした」

「そう甘くないんです。先ほどのTwitterや、Facebook、メルマガなどで何千、何万という人々に情報を届けることができる人や、有料で広告を展開できる人であればそれもいいんです。
でもネットでビジネスをスタートしたばかりの方やうまくいっていない方の場合、訴求できるお客さま(見込客)は非常に少なく、実際にはそれほどカンタンではないんです。その場合、圧倒的に『対面』が有利になるわけです」

相葉さんは驚いたように顔を上げ、僕に質問をしてきた。

「えっ、よくわからないです。なぜ『対面』が有利になるんですか?」

「先ほどの言葉を思い出してください。
狭くて高い(狭い顧客に対して、成約率が高い)のが『対面』で、広くて低い(広い顧客に対して、成約率が低い)のが『非対面』なんです。
ということは、見込客がほとんどいない、「狭い」場合、成約率が低い『非対面』ではうまくいかないんです。『非対面』は広くて低い(広い顧客に対して、成約率が低い)ものですから、広く訴求できることが条件になってきます」

僕は彼女が理解しているのかを確認しながら、続けて話した。

「相葉さんは既にネットで展開しているので、このことは実感しているはずです。ブログを毎日更新しても、TwitterやFacebookを毎日投稿しても、なかなかうまくいかない。
でもそれが見込客の方と実際に会ったら、『驚くほどすんなりとうまくいく』という経験をしたことはないですか?」

彼女は僕の目を見ながら、そして思いついたように目を大きく開いて答えた。

「あっ、あります。私の場合はそれほど多くはないですが、そんな経験をしたことがあります」

「それです。それは相葉さんだけじゃなく、僕は幾度となくそのようなケースを見てきました。成約率が高いのは圧倒的に「対面」です。
ではここで質問です。改めて答えてください」

<僕からの質問>

「あなたのビジネスは『対面』で展開していますか?
『非対面』で展開していますか?」

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彼女の様子を見ながら、僕は続けた。
「ここで一つ注意があるのですが、対面、非対面の両方で展開している場合はどちらを中心に展開しているのかを確認してください」

「私の場合は『非対面』です。ずっとネットで展開してきました。『対面』で集客するための活動はほとんどしていません……」

彼女はそう答えた後、「じゃあ、どうしたらいいんですか……」と小さく呟いた。

僕はその様子を見て、彼女に言った。
「今は現状を確認する段階なので、落ち込む必要はありません。ただ、相葉さんが落ち込んでいるので……、少しだけ応用編を話すと、ネットというのは多くの人が『ラク』だと思っているんです。だから、大抵の人が『非対面(ネット)』に力を入れてしまうわけです。まだ、見込客が50人くらいしかいない段階でも、です。すると、どうなりますか?」

「……『非対面』は成約率が低くて、多くの見込客が必要だから、うまくいかないってことですか?」

「そのとおりです。わかってきましたね。ここからの話はまだわからなくてもいいのですが、たとえば、見込客が50人でクリック率が1%で、成約率が1%だとしたら、クリックしてくれる段階で0.5人(見込客50人✕クリック率1%)。そこから成約する人の数は1人もいないわけです。1万人以上訴求できる人たちとは明らかに違う。だからこそ、何らかの方法で訴求範囲を広げるか、『対面』を組み合わせるなどの方法が必要になってくるわけです。僕がお手伝いしている創業わずかの期間に年商2億に達するようなケースでは、ここを戦略的に考え、展開していっています」

彼女は自分が1年半もの間、間違ったことを続けていたことに気がついた。それとともに、ここまでの内容を書いたノートを見返し、ショックを受けた表情でこう言った。

「第1の軸から第3の軸まで、3つとも不利な状況です。最悪ですね」

「最悪ではないです。相葉さんは確実に前進しています。3つとも不利な状況なのは事実ですが、本当に最悪なのはその状況に気がつかずにいることです。今はただ現在地を知るだけで良いのです。あとは、相葉さんがこれまで取り組んできたネットでの展開が常に正しいわけではないということを知ってください。 では、第4の軸をお話しましょう。いよいよ、最も重要な軸の話がスタートします」

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相葉さんは第1の軸、第2の軸、第3の軸共に「不利」な状況だったことに落ち込みながらも疑問も感じていた。

「3つ共に不利だったことはわかったのですが、どうしてもわかりません。小さくて知られていない企業はたくさんありますし、ネットでの展開も、誰もが考えているじゃないですか……。これだけスマートフォンが使われている世の中ですから。そう考えると、この3つの軸で見たら、ほとんどの企業がうまくいかなくなると思います」

僕は静かに彼女のその言葉を聞き、頷きながら答えた。

「そのとおりです。だからこそ、うまくいかなくなるビジネスが少なくないのです。特にその不利な状況を認識せず、ただ漠然とビジネスを進め、その対策をとらなかった場合はそうなります。きっと相葉さんの周りの、そのような企業は失敗しているはずです」

彼女は少し遠くの天上を眺めるようにして、考えこんだ。そして、目を細めた後、大きくして、僕を見て答えた。

「確かに……そうです。私の知り合いでも、そのような人たちはほとんどうまくいっていません。私と同じようにわずかな貯金を使って、なんとか生活している人もいます。彼女たちもどうしていいかわからないって話していました」

「相葉さん、不安になってしまう気持ちはわかります。ですが、ここは悩む段階ではなく、現実の問題を正しく見る段階です。その後、現実の問題が見えれば、そこから先はそれを解決するだけです。カンタンです。この現実の問題がわからないから、多くの人はその問題の存在にも気づかないし、問題を解決することもできないのです。そうして、問題を解決しないまま、不安な中、仕事をしていくことしかできないわけです」

僕はそう話して、彼女の様子を見た。すると、彼女は反発するような姿勢は崩し、まっすぐと僕の目を見て次の話を待っていた。そんな彼女の様子に気づいて、僕は続けた。

「では、いよいよ最後の軸です。
第4の軸は『』。これは『形』がある商品か、『形』がない商品かということです。
一般的にコンサルティングやコーチングなどの商品は『形』がない商品で『在庫を抱える必要はないし、利益率が高い』と言われ、非常に有利な商品だと言われています。
確かにそれは間違いありません。実際にコンサルティングやコーチングなどの商品が売れれば、利益率は高く、非常に良いビジネスです。
ですが、問題があるのです。その問題は『売る』ことにあります。顧客調査をしていると、顧客の声に頻繁に見られるのが『実体が見えない(実体が見えないから、買わない)』という言葉です」

「……実体が見えない?」

「『形がない商品』だから、当然なのですが、お客さまに商品の実体が見えず、その商品が見えないし、信用されないのです」

「確かに、私と同じようにコーチングを仕事にしている人のブログなどを見ていても、『よく中身がわからないな』ということが頻繁にあります。『この人は何をしているんだろ』と思ってしまいます。同業の私がわからないのだから、お客さまはまったくわからないと思います」

「そうなんです。ここは『形がある商品』とは明らかに違います。
たとえば、iPh●neのようなスマートフォンであれば、その写真などがホームページに掲載されているだけで、詳細な仕様がわからなくとも、ある程度のイメージがわきます。ですが、『形がない商品』はそれが本当にわきにくい。ただ、これは僕も偉そうなことは言えないです。実際、僕自身もマーケティングを始めた頃はそうでした」

「橋本さんもそうだったんですか」
彼女は僕にもうまくいかない時期があったことを聞き、安心したようだった。

「相葉さんと変わらないです。僕はマーケティングに取り組みはじめて16年になりますが、最初に取り組んだのがまさに『形がない商品』でとにかくうまくいきませんでした。
当時はある企業でマーケティングに取り組んでいて、優秀な広告代理店、優秀な専門家などに協力してもらいながら、ビジネスを展開したのですが、まずうまくいかない。『形がない商品』の売り方も見えてこなかったですし、幾度となく『会社を辞めたい』と思ったくらいです。そこから、膨大な試行錯誤を繰り返し、成果が徐々に上がるようになりました。
その後、幾年もかけて、高い成果が出せるようになり、大手企業などのマーケティングを手伝うようになりました」

「どうして、そこからいきなり、大手企業などのマーケティングをお手伝いするようになったんですか?」

僕は彼女のその質問が本題から外れそうな気がしたので、回答しつつも、軌道修正しようとした。

「それは本題ではないので、深くはお話しませんが……
高い成果が上がるようになった段階で、大手ネット広告代理店などから『国内トップクラスの担当者』といわれるようになったのです。そこから、大手メーカーなど、いつくかの企業のマーケティングをお手伝いするようになりました。そして、強く記憶に残っているのが、あるメーカーのマーケティングをお手伝いした時のことです。扱ったのは『形がある商品』で、その時に『形がある商品』は売りやすいということを強く実感したのです。その後、様々な企業を対応させていただきましたが、その考えは一層強まっています。『形がある商品』は非常に売りやすいです」

「やっぱり、形があると、目に見えるからですか?」

「そのとおりです。ここは大切なので、確実におさえてください。『形がある商品』というのは形があるだけ、商品は見えるし、実体があることで信用されやすい。逆に『形がない商品』は形がないので、商品は見えないし、実体がないので信用されにくい傾向にあるのです。
さらにいえば、小さな企業の『形がない商品』はその商品開発力が(大手などと比べ)圧倒的に低く、商品として『形』になっていないため、余計に売りづらいわけです。
『形がない商品』は利益率が高いのですが、売りづらく不利なのです。ここを押さえてください」

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「利益率は高いけど、売りづらく不利……。そこが少しわかりづらいのですが」
彼女はやや混乱している表情をした。

「たとえ、『形がない商品』の方が圧倒的に利益率が高くとも、まったく売れなければ、売上は0円ですよね。意味がないわけです。売れてはじめて、その利益率の高さが生きてくるわけです」

「私のケースはまさにそうだと思います。ほとんど売れていませんので……。たしかに売れなければ、利益率が高くても、まったく意味がないですね」

「そうなんです。利益率が高いことは決して意味がないわけではありませんが、売れなければ利益率が高いも低いもないわけです。そのため、『売る』ことと『利益率が高い』ことを切り離して考えていきます。そして、『売る』という視点で見ると、『形がない商品』は売りづらく不利なのです。では、質問に改めて答えてください」

<僕からの質問>

「あなたの商品は『形がある商品』ですか?『形がない商品』ですか?」

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彼女はこれで4つの条件の説明が終わったんだ……と思いながら、自分のノートに書いたメモを眺めながら、ショックを受けた表情になっていた。

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そして、彼女は呟いた。
「一体、今まで何をやっていたんだろ……」そう思うと、悔しくて仕方がなかった。僕はそんな彼女の様子を察し、「少し休憩でもとりましょうか?」と言った。

いよいよ、この4つの軸を全体から考えていくことになる。ここから重要な話に入っていく。

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